DNA dB super E-specに製品化の目処が立った頃、製品企画の伊藤は、もう一つの環境タイヤの企画を打ち出した。
「DNA dB super E-specの技術エッセンスを使って、もっといろいろな人に使っていただける対象幅の広い環境タイヤを作ろうということで企画したのが『DNA Earth-1』です」
 技術の粋を尽くして環境性能を追求したDNA dB super E-specに対し、DNA Earth-1はより多くのユーザーに対応するため、セダンやミニバン、コンパクトカーや軽自動車といった幅広い車種に対応するサイズをそろえ、オールマイティに満足できるタイヤを目指した。
 このDNA Earth-1の設計を担当したのは、野呂に代わってタイヤ設計部のリーダーとなった斉藤賢介。
「すでに基本設計まではできていて途中から私が引き継いだのですが、ぎりぎりのスケジュールの中で全70サイズの金型を一気に設計するということになり、非常に大変だったのを覚えています。開発チームや生産現場の仲間には本当に助けられましたね」
 DNA Earth-1のキャップトレッドには、DNA dB super E-specで採用されたオレンジオイル配合「スーパーナノパワーゴム」の技術を応用。ベンチマークとした「エコタイヤDNA」の代表的商品(DNA ECOS)に比べ、ころがり抵抗を21%低減した。このほかトレッドパターンや構造も新開発し、優れた省燃費性能を実現しながら、ウェットグリップ力、乗心地、静粛性などをハイレベルでバランスした“マルチパフォーマンス”を有するタイヤとなっている。
「例えばタイヤの幅を狭くすることでもころがり抵抗の低減は可能です。しかし、ころがり抵抗低減だけを追求して他の性能を我慢するタイヤにはしたくなかった。環境性能と走行性能を高い次元で両立させたDNA Earth-1は、いわゆる低燃費タイヤのイメージを変えるタイヤになったと思います」(斉藤)






 このタイヤの販売促進に携わった新井洋介はこう話す。
「環境問題や経済性に対する意識の高い人が増えている中でDNA Earth-1の発表があり、売れるだろうな、と直感しました。このタイヤは環境にも、お財布にもやさしいタイヤですから、それをどうやってお客様に伝えていくかということを考えてきました。」
 販売開始後、実際にDNA Earth-1を使ったお客様からは、『燃費が良くなった、そして音も静か』とか、『アクセルを緩めたときに、クルマがすっと進む感じがする』など、の好評をいただいているという。そして販売の現場では、お客様からこういった声が届くと、さらに自信を持って次のお客様にもお勧めすることができる。
「口コミの評判も広まっているようです。今まで省燃費タイヤとしてはそれほど多くなかった『指名買い』も増えています。もちろん、我々メーカーの販売部門と販売会社さん、販売店さんが一丸となって、このタイヤの良さをお客様にお勧めする努力をしてきた成果でもあります。」(新井)

 ユーザーのなかには『DNA Earth-1購入後、燃費が1割くらい上がった』という人もいるとか。
「実際の燃費向上性能に加え、お客様の環境・省燃費への意識や期待もあり、自然とエコ運転になるのでしょう。相乗効果で地球環境にも良いことと思います。」(伊藤)
 エコタイヤの存在がドライバーの意識にも影響を与えている。これは非常に嬉しいことだ。実は10年前に伊藤たちがDNAシリーズを世に送り出した頃は、『環境ではタイヤは売れない』という声もあったという。
「環境タイヤをみんなで10年続けてきたことで、こうして世の中に誇りを持って出せる技術を身につけることができたわけです。現在、あらゆる自動車メーカーがハイブリッドや電気自動車など環境側にシフトし、タイヤメーカーに対する期待はさらに大きくなっています。今後もそうした時代の要請に応えられる技術を培っていくことが、私たちの使命だと考えています」(伊藤)


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