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天然ゴムの性質をコントロールする新しい方法を提案したのが、材料設計の網野直也である。
「石油外資源比率を落とさないためには石油系の配合剤は使えない。そこで石油系ではない材料を使って、どのように天然ゴムのグリップ力を確保するかがポイントでした」
網野のアイデアは、従来使われていた石油系の配合剤の代わりにオレンジオイルを使うということだった。実は網野とオレンジオイルとの出会いは、いまから10数年前、彼がまだ新米の技術者だった頃にさかのぼる。
「タイヤ原料の担当だったときに、たまたまある原料メーカーさんからオレンジオイルのサンプルをもらったんです。実験に使ってみて、ゴムの軟化剤として良好な結果が得られることを確認しました。しかし石油系のオイルに比べると、当時はコストが高くて実用化できなかった。今回この話が来たときに、その経験を思い出したわけです」
実はオレンジオイルをタイヤに使うこと自体は、全くの新発想というわけではなく、これまでもレーシングタイヤなどにおいて、オレンジオイルを含む配合剤がグリップ力向上剤として使われることがあった。しかしオレンジオイルはあくまでも補助的に使われていたにすぎず、これだけでゴムの軟化剤として十分な性能が出せるかどうかまではわかっていなかったのである。




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網野たちが詳細な実験を重ねることによって見えてきたのは、オレンジオイルと天然ゴムとの、抜群の相性の良さだった。
「オレンジオイルは、天然ゴムと同じイソプレンという基本単位で構成されているため、非常になじみやすい。しかも分子サイズが天然ゴム分子と比べて非常に小さいので、天然ゴム分子の隙間に入り込んで分子レベルで混ざり合うことができるんです」
一般にタイヤに使用される石油系のオイルは様々な成分を含むこともあって、添加により転がり抵抗が悪化する傾向があった。しかしオレンジオイルは天然ゴムとの相容性が高く、不純物もほとんどないため、そういった悪影響がほとんど出ないという。つまり低いころがり抵抗を維持しつつ、アクティブ走行時に必要なグリップ力を生み出すことができる理想的な軟化剤であることがわかったのである。 |



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